女性のメンタルヘルスについて
女性特有の心身の不調はホルモン変化やライフイベントなどが原因となって発症します。
特に、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、産後うつ病、更年期障害などは、イライラや抑うつ状態、不安感といった精神症状がよくみられます。これらの治療については婦人科と連携して行うということもあります。気になる症状があるという方は、一度ご相談ください。
月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)
多くの女性が感じる生理前のさまざまな不調を月経前症候群(PMS)といいますが、こころの不調が際立って強く生活に支障をきたす場合は月経前不快気分障害(PMDD)と診断されます。
月経前症候群(PMS)
生理前2週間(生理周期の黄体期)に気分のおちこみ、イライラして、感情のコントロールができない、睡眠障害などの精神症状と、むくみ、乳房痛、体重増加などの身体症状が見られます。
月経前不快気分障害(PMDD)
月経前症候群よりも、著明な抑うつ気分、不安感、情緒不安定、過食、過眠など重い精神症状が出現します。 生理前になると、理由もなく落ち込み、イライラして感情のコントロールが難しく、夫、彼氏、家族など親しい人にあたってしまう。生理が始まると気持ちも落ち着きますが、生理前の言動に対して、自己嫌悪を感じます。 落ち込みが強くなると生きていたくなくなるなど症状は深刻です。
月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)の治療について
主に薬物療法や精神療法を行います。気分の落ち込みには抗うつ薬を、イライラには抗不安薬や漢方を、感情のコントロールには非定型抗精神病薬を使用することがあります。
精神療法では、まずは病気の性質を知ることや治療が必要な疾患であることを理解していただきます。薬物療法は不安感、イライラ、気分の落ち込みなどの症状を軽減し、症状が緩和されることによって、日常生活が楽になったり、対人関係のトラブルが減ったりと生活しやすくなります。
産後うつ病について
産後うつ病は、産後6週間位(多くは2~5週)までに発症するうつ病です。
症状としては、気分が落ち込む、イライラする、興味関心が持てないなど、うつ病の症状とほぼ同じです。10〜20%の人が経験していると言われています。産後うつ病とは別にマタニティ・ブルーズというものがあります。これは分娩後3~10日の間に起きる、理由のない涙もろさ、気分の落ち込み、情緒不安定などであり、こちらの方は、通常は自然軽快します。
産後うつ病になると、極端に悲しくなったり、泣き叫んだり、易怒性や気分の変動がみられたり、日常活動や子どもへの関心を失うことがあり、日常生活にも支障が出ます。産後のお母さんは、これまでになかったような大きなプレッシャーとストレスを感じています。早めに治療を受けることにより、その方にあった方法で治療し、回復に向かうことができます。思い当たる症状があったら、1人で頑張らずにご相談ください。
更年期障害について
女性は30代後半から女性ホルモン(エストロゲン)の量が減少していくようになります。そして50歳前後の年齢になると多くの女性は閉経(日本人女性の平均は50.5歳)を迎えるようになりますが、この閉経を挟んだ45~55歳までの約10年間(広義では45-65歳付近)を一般には更年期と呼びます。
更年期の年代になると、女性ホルモンの分泌量は急激に減少します。そのため、体がその変化に対応できなくなることで様々な不調を招くようになります。ただ、この不調症状は個人差が大きく、非常に強く感じるという方から全く感じないほど弱い方まで程度はまちまちです。なかでも日常生活に差し支えるほどその症状が現れた場合を一般に更年期障害と呼びます。最近では、男性の更年期障害も広く認知されてきています。
更年期障害には下記のような症状があります
血管運動神経症状
ホットフラッシュ、発汗、冷え、動悸
運動器系症状
肩こり、腰痛、関節痛
精神神経症状
不安、緊張、不眠、抑うつ気分、イライラ、物忘れ
知覚異常
手足のしびれ、感覚が鈍る
更年期障害の治療について
必要に応じて漢方薬や抗うつ薬などの薬物療法や精神療法を行います。
また、女性・男性ホルモンの血液検査を受けていただくことも可能です。ホルモン補充療法などを検討される場合は、婦人科や泌尿器科などの専門医へのご紹介いたします。